らくガキ日記

アモイ在住の兼業イラストレーターの日記

サウザンド•サニー号製作05 "接着剤なしという奇跡”

 このサウザンド•サニー号のキットは、前回のメリー号と同様に接着剤なしで組み立てることが可能です。樹脂プレートからパーツをニッパで切り出し、パーツからはみ出ているゲートを彫刻刀とヤスリで削っていくきます。パーツは心地よい感触とともに合わさっていきます。まるで、私が組み立てているというよりも、サニー号が自らの意思で組み上がっているかのようでした。そこには部品の不良や、説明書の難解さに悩む私はいません。ただキットに全幅の信頼を寄せ、自分の手の動きを客観的に見ていた私がいたのです。まるで寄木細工のようにきっちり組み合わさる部品を見るたびに、私は昔見た光景、いや、ある方を思い出してしまうのです• • •


 2006年の年の暮れに私は東大阪の工場街で、慣れない外回りをしていました。そこでお会いした金型屋さんの社長さんです。その方は自分の金型で成形された製品に触れながら、こんなことを言われました。


     (1ミクロンは1mmの1/1000の長さです)

 そうです、いくら金型を精密に作っても、樹脂の性質により、そのとおりの寸法になるとは限らないのです。パーツとパーツが一体になるには、結合部の軸の寸法が挿入される穴に対して、若干大きい(おそらく、1/100 mm程度たど思います)必要があります(注1)。軸が大き過ぎると穴に入らず、軸が小さ過ぎるとスカスカで固定できないからです。接着剤なしで組み立てられるキットとは、百点以上のパーツの結合部すべてがこの条件を満たさなくてはなりません。そして、発売するキットの点数は数万単位でようから、保証しなくてはならないパーツ点数はは膨大な数に及びます。心地よく結合されるパーツ一つ一つは私にとって奇跡です。そこには、膨大なノウハウと労力、そして情熱が詰まっている筈なのです。(おわり 5/1)


(注1)工学的には結合部の軸と穴との寸法の関係を”はめ合い”と呼びます。軸が穴より大きい状態を”しまりばめ”と言います。


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みなさまは、ゴールデンウィーックはいかがお過ごしでしょうか?
わたしはオッサンを描くのが好きなのだと、本日気づいてしまいました。