らくガキ日記

アモイ在住の兼業イラストレーターの日記

妄想中国論04”床格差ー都市篇(完)ー”


<床の地位向上>
 都会で成功した人たちの部屋は立派な家具や家電製品、調度品で満たされています。それらは貧しい状況から心血を注いで働いた結果であり、けして楽に手に入れたものではありません。床もピカピカのタイルかフローリングです。いくら仲の良い友達でも土足で入られては面白くないでしょう。だいたいにおいてリビングには大きなソファーが鎮座しており、家人と床との距離を否応無く近づけています。これも土足禁止令を公布する一つの理由かもしれません。土足禁止といっても日本のように素足で過ごすことはありません。スリッパ履きが標準です。

<床格差による微妙な温度差>
 三つの格差別の床の扱われ方の違いを簡単に述べてみました。日本も勝ち組、負け組などと言われますが、生活空間における床の位置は見事に規格統一されております。私にはこれはとても幸せなことに思えるのです。中国では人様の家にお邪魔したとき、ドアを開けた瞬間にその家の床設定を読み解く能力が必要です。私はこの能力が低いようでして、”あ、脱ぎます”、”え、脱がなくていいの”、”でも、あなた脱いでるじゃないですか?”といったぐたぐたな場面を何度か経験したことがあります。日本人はもっと畳に感謝しても良いと思います。

<まとめと富裕層の影>
 以上のように中国の格差社会を床を通して見てみました。そこにあるのは経済的な格差ではなく、大げさに言えば文化の分断です。床という基本的な構成要素の扱い方によって中国の人々に微妙な温度差があることを感じていただけたら幸いです。そして、私がどちらかというと強調したいのは、成功した人、チャイナドリームを手に入れた人たちの影の部分です。彼らは田舎を出て、遮二無二働き、社会的地位、立派な家や車、デジタル家電を手に入れました。しかし、彼らはこれからは二度とヒマワリの種を何の遠慮もなく散らかしながら親戚や友人たちと談笑する時間を自分の家で持つことはできないのです。私は何度か田舎で寂しそうにしている彼らを見たことがあります。その時の様子は豊かな時代を経験してしまった現代の日本人を鏡に映した姿そのものかもしれません。ー床格差 完ー

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本日もらくガキ日記においでいただきありがとうございます。
次回は中国の田舎についてもう少し詳しく書いてみたいと思います。